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医の機能と役割、さらに老人医療を含めた在宅ケアのあり方について、実地の専門家から解説してもらい、理解を深めていただくことにした。

(1)基調講演:地域社会における家庭医のあり方と実際

高齢者が増加し、寝たきり、痴呆が増える傾向にあり、また、現代社会の中で心の不健康が目立つなど、地域社会における健康面の変化について述べた。これに対し、医療の対応は十分かを、QOL(生命・生活の質、生きる意味)、インフォームド・コンセント(説明と同意)、バイオエシックス(生命倫理)、全人的医療、地域包括医療、プライマリ・ケアといった新しいキーワードを通して考えてみた。さらに、家庭医の役割について、さまざまな治療法、あらゆる健康問題への対処、他の家庭医、専門医や健康問題に係わるあらゆる職種との連携などさまざまな角度からの説明を行った。

(2)シンポジウム(地域社会における家庭医と在宅ケアのあり方をめぐって)

家庭医をいかに育て活用するか、また在宅ケアをいかに普及・充実させるかは、日本の医療の最重要課題になっている。良き家庭医の存在は真に救世主であり、患者の救済、家族構成の維持、精神上の支援など、その果たす役割は誠に大なるものがあり、また訪問看護を中心とした在宅ケアの充実によって、患者の尊厳が守られ、家族の心が癒されることの意義もまた再確認されるべきである。これらを地域社会の中で、考え、実行し、社会の中の問題として互いに手を結び合いながら、いかに真正面から取り組むかを考えるのがこのシンポジウムのねらいである。

・医師の立場から

日常診療の中で日々感じている地域医療の問題点について、「地域の住民はどんな医者を求めているのか」、「医師にとって地域のカベとは」について述べた。

・看護の立場から

訪問看護ステーションは、患者のかかりつけ医の指示に基づいて訪問看護を行う独立した事業所として平成4年から活動してきた。平成8年8月でその数1,438カ所である。しかし制度創設以来僅か4年の経過のなかで利用者のニーズに即応していくには解決しなければならない課題も数多くある。訪問看護の実情を通して、それらの課題を整理し解決の糸口を見いだす。

・家族の立場から

ぼけ老人を抱える家族の交流を通して、ぼけや介護の理解を深め、ぼけ老人とその家族の援助と福祉の向上を図る立場からこの問題に対する取組みについて述べた。

・行政の立場から

在宅医療の変遷、内容、拡大の背景、サービスの内容、技術の進展、介護保健の在宅ケアなどについて説明を行った。

・建築士の立場から

有病高齢者、身体に障害を有する人々が、自分の家又は気に入った所で在宅生活を楽しむために建築の立場から解決を迫られている課題と具体的な方策、方法論について述べた。

 

 

 

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